ラピュタ・アカデミック

従来にない形で、ラピュタの物語と登場人物の心底を考察する

第5章 パズーに関する考察。(前編)

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 いよいよ主人公の1人、パズーに関しての考察である。パズーは行動力もコミュニティ力も高く、かなりのハイスペックなキャラクターと言われているし、私もそう思っているが、監督の設定によれば、その熱い心以外は何一つ突出した所がない普通の少年という事らしい。これは未来少年コナンのコナンと比較すると解りやすいかもしれない。コナンは実際相手を倒してしまうからだ。流石に冒険活劇では普通の少年では動かせないので、身体能力は高くしている様だが。
 序章でも書いたが我が師の考察である。失敗は許されない。もっとも私も男、失敗しないので!!もとい、失敗するつもりは無い。

 ・パズーは、天然のタラシではない

 パズーは余りにも有名なので箇条書きとするが、早くに両親を亡くし、炭鉱の見習い少年として働きながらも、父がみたラピュタの島を信じ、詐欺士扱いされたまま亡くなった父の無実を証明する為、ラピュタに行く事を夢見る少年である。シータが飛行石と共に飛行船から落ち、パズーに助けられた事で一気に運命の物語が幕を開く訳だが、パズーの台詞をちょっと考察したい。
「安心した。どうやら人間みたいだ。さっきまでひょっとすると天使なんじゃないかって心配してたんだ。」
聞きようによっては口説いている様にも感じる台詞だ。後で紹介するがパズーの台詞には似たような物が結構ある。しかしパズーが言うと嫌味がない。それはそうだろう。本音で言っているからである。結論から言うと、特にパズーの台詞はそのまま心底に直結していると私は睨んでいる。しっかり根こそぎ拾っていきたい。

 ・実はパズーはシータに一目惚れしていた!

 第4章で述べているが、ラピュタの物語には冒険要素だけでなく、恋愛的な要素も十分に含んでいると感じる。何しろ、シータがパズーを好きになっている事が絵コンテに書き込まれているくらいである。そのタイミングは当記事の冒頭写真。パズーが僕の頭は親方の拳骨より硬いんだと言って、シータとパズーが共に笑い出すシーンである。これは結構有名だが、パズーがシータを好きになるのは何とそれより早い。
 私はある1つの場面が引っ掛かっていた。海賊に追われ親方の所へ逃げ込むのだが、おかみさんに家の中に入れられ、裏から逃げろと言われる。その際のおかみさんの台詞、
「いい子じゃないか、守っておやり。」
これは明らかに何かを含んだシーンだ。おかみさんはシータと初対面であるから性格の話ではない。明らかに切羽詰まった状況で浮いた台詞なのである。因みにパズーはその後シータの顔を見て「うん。」
と頷いている。パズーはコミュニティ力が高いので
反応も加味しておかみさんの言いたい事を理解している感じだ。
 場面は進み、廃坑に逃げ込んだパズーとシータが食事をし、会話をする所で、再びパズーの台詞、
「君が空から降りてきた時、ドキドキしたんだ。きっと素敵な事が始まったんだって。」
これで謎が解けた。パズーの台詞は、空から降りてきたシータに一目惚れしてた事をそのまま暗示していたのである。だから天使みたいに見える訳なのだ。シータをいい子と言われた後の反応とも合致する。パズーの台詞が気障だという事に気を取られていると、こういう所を見失ってしまう。
 あと補足だが、よくパズーとシータは吊り橋効果で仲が良いんだという指摘があるが、本記事でハッキリ否定させて頂く。そもそも、吊り橋効果とは吊り橋の様な不安定で恐怖を感じやすい所で出会った2人が恋愛感情に陥りやすい事を指し、アクションものや冒険物でよくあるシチュエーションなのだが、この2人に関しては冒険どころか追いかけっこすら始まってない段階で好きになってる訳だから該当しないのがお解りだろう。

 ・パズーに足りなかった「覚悟と力」

 その後ポム爺さんに会い、シータの飛行石がラピュタ人の物と知り、ラピュタの存在が確かなものになっていくと、パズーは更にラピュタを熱望するが、途中で軍隊に捕えられ、ムスカによって引き裂かれる。厳密には、ムスカに脅されたシータが直接パズーに引導を渡す訳だが、その際のパズーの台詞、
「まさか、シータ・・約束したじゃないか!」
 実はこれは巧い台詞なのである。約束してないよね?で止まってはいけない。実際は約束してないのに約束したと思っている程、ラピュタとシータの事でパズーは浮ついていたのである。第4章でも述べたがこの時のパズーはシータへの感情がまだ恋心という感じで、愛心にはなっていない。13歳という
少年だから力に関しては仕方ないとしても、パズーにはシータを守る覚悟が足りなかったのである。

 ・実はパズーは「リアリスト」である!

 シータと引き裂かれたパズーは別人の様にしょげかえっていた。おかみさんをも振り切り、家の近くで転倒。ムスカからシータと引き換えに貰った金貨を投げ捨てようとするが捨てられず、すごすごと家に戻るのだが、第1章でここは重要と言っていた。
序章でパズーはシータに裏切られたと思い失意になる事は述べているが、実はパズーが金貨を捨てられなかったのは、パズーがリアリストである証なのである。投げ捨てられない理由は、ここで金貨を投げ捨てても、シータが戻ってくる訳ではない事を本人が解っているからなのだ。勿論お金の有り難みを知っているという事はあるだろうし第1章でも述べているが。なので、シータと離された悲しみを胸にすごすご戻ってくるしか無かったのだ。実は他にもパズーはリアリストらしい行動を取っていて、列車のシーンでシータは軍隊から逃げようとするが兵士が追ってきて、パズーはその際足を出して兵士を足止めしている。ただ何故逃げるが聞くだけではない。また、パズーが海賊に捉えられた後、動こうとする海賊にパズーが仲間に入れてくれと嘆願するのは、自分に力がない事を思い知らされ、シータを助ける為には他に方法が無いと理解しているからである。そして、パズーがリアリストである事は、この冒険活劇を成立させる為の重要なポイントとなる所なので、是非抑えておいて頂きたい。
 それにしても、パズーが受けたドーラの説教はパズーにしてみれば相当重いものだっただろう。私自身からみて、あれはパズーに対して、浮ついた夢を追いかけるのか、それどもシータの為に尽くすのか、一体どちらなんだとパズーに投げかけている感覚があるのである。
 また、パズーは自身を歯がゆく感じだのではないか。シータを助ける筈だったのに、助けられたのは自分の方であると知らされ、そんなシータを少なからず疑ってしまったのだから。

 パズーについての考察だが、まだ半分ほどしか描写してないのに相当な量になってしまった。さすが我が師である。(汗) 急遽予定を変更し、前半と後半に分けて考察していく。